連載:2013年のスパムサイト戦記 第4話
旧トップページ「アトピーは水を飲んで治す」には、奇妙な一行があります。アトピーと水道水の話をしている途中で、突然こう書いてあるのです。
(プライベートブランドが危険な理由は後で説明します)
そして後半では、本当に、大手スーパーのプライベートブランド(PB)商品を批判する節が始まります。アトピーとも水とも関係のない話です。なぜこんな文章を書いたのか。そこには、当時の私が肌で感じていた時代の空気がありました。
商店街が消えていった頃
2000年代の後半から、大型ショッピングセンターが地元の小さなスーパーや商店街を次々と飲み込んでいきました。そこにリーマンショックが来て、格差が広がり、日本全体が目に見えて貧しくなっていった。それが、私の覚えている当時の実感です。
そんな中で2010年代の初め、安いけれどまずいPB食品が一気に広まっていきました。安さと引き換えに何かが失われていく。その感覚が、アフィリエイト記事の中に漏れ出したのが、あのPB批判です。
記事の中で何が起きていたか
旧ページのPB批判は、大きく3つの主張でできています。PB商品では産地偽装に近いことが横行している。低価格のために添加物が多く使われている。そして、地域の地場産業を駆逐して、地域のお金を東京に集めている。最後は、地域の企業で物を買って地域産業を応援しよう、という結論で締めています。
当時のニュース記事へのリンクが1本だけ貼ってありますが、産地偽装や健康被害について、根拠と呼べるものは示していません。
実感と事実を混ぜてはいけなかった
いま読み返して思うのは、2つの違う話が混ざっている、ということです。
ひとつは、大型店の進出で地域の商店が消え、地域経済が弱っていくという話です。これは当時の私の実感であり、立場によって意見が分かれる、議論する価値のあるテーマです。
もうひとつは、特定企業のPB商品に産地偽装が横行していて、体に悪い、という断定です。こちらは事実として確認したものではありませんでした。しかも、それをアトピーの原因の話とつなげて、水を売る記事の中に置いていました。
怒りは文章に熱を与えます。当時の私の文章に熱があったとすれば、それはこの怒りが本物だったからです。ただ、怒りは根拠の代わりにはなりません。展示室では、この節の直前に、根拠がないことを明記した注記を入れました。
振り返って
アフィリエイトの記事に、書き手の本音が紛れ込むことがあります。それ自体は悪いことではなく、むしろ読まれる文章の源になることもあります。問題は、本音と事実の境目を、書き手自身が見失うことです。実名の企業について書くときは、なおさらです。
展示資料:旧トップ「アトピーは水を飲んで治す」の後半「なぜ、プライベートブランド商品が危険なのか?」。特定企業のPB商品に関する記述は、事実として確認したものではありません。