連載:2013年のスパムサイト戦記 第2話

売れ残った偽装PR5のドメインに、何を載せるか。選んだのはウォーターサーバーでした。当時、ウォーターサーバーは「儲かるらしい」と言われていたジャンルで、私も試験的にやってみることにしたのです。

そしてもうひとつ、水素水です。いまでは信じられないかもしれませんが、当時は水素水という商材が、ごく普通にアフィリエイトできました。

ASPはA8.netがメインで、一攫千金を狙って、情報商材のインフォトップにも少し手を出していました。ウォーターサーバーの報酬は、成約1件で12,800円だったと記憶しています。

水を売るには、水道水を悪者にする必要がある

ウォーターサーバーを契約してもらうには、「水道水ではだめな理由」が要ります。旧トップページ「アトピーは水を飲んで治す」を読み返すと、その理由づけがどう組み立てられていたかがよく分かります。

流れはこうです。昔の日本にはアトピーはなかった。高度経済成長で生活が合理的になり、水道水には塩素が入るようになった。塩素やトリハロメタンが免疫を狂わせてアトピーが起きる。だから天然の水を飲むか、浄水器を付けよう。そして最後に、飲む水はこちら、と誘導します。

商品が先にあって、そこから逆算して「病気の原因」を作っている。いま読むとそれがはっきり見えますが、書いていた当時は、ひとつながりの話として書いていました。

アトピー×ウォーターサーバー、設置代金の比較

同じドメインには、もっと直接的なページもありました。「アトピーに効く水のウォーターサーバー」では、アトピーだけでなく脂肪肝の治療まで持ち出して、特定の水を勧めています。副作用の話にステロイド剤の説明が混ざっていて、文章としてもつながっていません。

「ウォーターサーバーの設置代金」は、天然水、海洋深層水、浄水機サーバーの料金を並べた比較ページです。ここにはウォーターサーバーの広告バナーが3枚並んでいました。展示室では、その場所を点線の枠で残しています。

「168000円台で水素水」

旧トップのサイドバーには、「168000円台で水素水」という一文と、水素水の広告バナーが貼ってありました。水素水は、そのくらい当たり前に売られていた商材だったのです。

その空気が変わるのは数年後です。2016年12月に国民生活センターが水素水の商品テストの結果を公表し、2017年3月には消費者庁が水素水などを販売する事業者に景品表示法の措置命令を出しました。詳しくは「なぜ人は怪しい水に引き寄せられるのか」で書いています。

振り返って

ジャンルを選んだ基準は、読者の悩みではなく「儲かるらしい」でした。案件が先に決まると、主張は後から作られます。アトピーという、本当に苦しんでいる人がいる病気を、その材料にしてしまった。この点は、当時の事情がどうであれ、いまの私ははっきり間違いだったと思っています。

いまアフィリエイトやブログを書いている人に向けて、ひとつだけ実物から言えることがあります。案件から逆算して書いた記事は、読み返すと必ずつなぎ目が見える、ということです。

展示資料:旧トップ「アトピーは水を飲んで治す」、アトピー×ウォーターサーバー、設置代金の比較。健康・医療に関する記述は根拠のない誤りです。

第1話 深夜のドロップキャッチとヤフオクの在庫第3話 サイト量産と「アトピー×水」